半田屋と豚汁と私@愛宕橋店(2)
前回の記事では、「半田屋・愛宕橋店」閉店の日について書きました。
今回は、半田屋の豚汁と私についてのお話を。
学生時代のアルバイト
私が半田屋の豚汁を一番食べていたのは、学生時代になります。
当時の私は、奨学金では足りない学生生活の生活費を稼ぐべく、アルバイトをしていました。
幾つかの職場を体験した後、定期的にシフトに入れて他より時給が良い仕事として、深夜のカラオケボックスを選びました。
勤務時間は、夜の22時から朝の5時まで。
夕食は食べてから行きますが、深夜働いているとお腹が空くんです。
当時、仕事が終わった後に空いているお店は、吉野家かコンビニぐらいで、吉牛は良く食べました。
しかし、牛丼だけでは栄養が偏るので、カラオケボックスと当時住んでいた学生寮の中間に位置する、愛宕橋の半田屋に寄って帰ることにしました。
明け方の半田屋にて
20年以上前の当時、愛宕橋の半田屋は24時間営業ではなかったと思いますが、明け方までは営業していました。
そこには、同じ様に深夜の仕事を終えた人達、タクシーの運転手さんなどがやってきていました。
その時、いつも食べていたメニューはこちら。
当時の写真ではなく、かつ、ご飯のサイズがめし(ミニ)になっていますが、「メンチカツ・めし(小)・豚汁」が私の定番メニューでした。
メンチカツにはソースをかけ、横にマヨネーズを添えます。
ソースで味を濃くしたメンチカツを割箸で刻み、マヨネーズを付け、ご飯をたくさん口に頬張ってから、豚汁でお腹へと流し込む、そんな食べ方。
私は、毎回このメニューをおばちゃんに注文し、壁に向かった席で黙々と食べ、そして原付きで寮へと去っていました。
愛想の話
アルバイトのシフトは週に4日入っていましたので、少なくとも週に4日は半田屋に行きます。
そして、同じ様におばちゃん達も連日シフトが入っているようで、同じ4人のメンバーが3人ずつ交代でお店に来ていました。
深夜のおばちゃん達は、誰に対しても触れ合いを求めて、
「大学生なの?」「どこに行っているのかい?」とか、
「夜に働いてるのかい?」「毎日で疲れないかい」とか、
色々と声をかけてくれたりしました。
それなのに、当時の私は大人の人と話すのが、というより親しい人以外と話すのが苦手で、毎度の事ながらうまく返せないんです。
それに引き替えタクシーのおじさん達は、さすがでした。
商売柄なのか、おばちゃん達に気さくな言葉をかけて颯爽とレジを済ましていくダンディーさ。
どうしたらそうなれるのか、それとも元々の性格が違うのか、とても羨ましかったものです。
しかし、そんな愛想の悪い私に対しても、めしの盛りを良くしてくれたり、豚汁の具を多く取ってくれたりと、 貧乏学生には優しいところでした。
こちらの写真は「カツ丼」。当時は300円ぐらい。
カツ丼と豚汁というゴージャスなメニューも、たまに食べました。
熱々の豚汁
豚汁が最も美味しい時、そう、それはとても寒い日です。
一年を通じて豚汁が販売されていて、一年を通じて豚汁を頼んでいるのですが、寒い冬の豚汁は特別です。
アルバイトへは原付きで通っていて、車の少ない朝の道路をかっ飛ばして走ると、正面からの風が貧困の身体に当たり芯から冷えます。
そんな冷えた身体に、
「豚汁の器を両手で持った時のぬくもり、その器から湯気となって漂ってくる煮込まれた豚汁の匂い、それをそのまま口に運んでズルズルと温かい汁をすする時」、
たまらないものがあります。
寒い季節は、ご飯でお腹を満たすよりも、冷えた身体を豚汁で暖めるのが第一でした。
この写真の豚汁は、上の方の写真の豚汁より、いい感じの豚汁です。
なにせ、だいぶ煮込まれています。
(右は、限定メニューの玉子丼。天かすと玉ねぎを卵でとじて、紅生姜が添えられています。丼ぶりとしては、最安値のメニューでしょう。)
通の豚汁
半田屋の豚汁は、各店舗で具材を投入し、煮込んでいるようです。
深夜の時間帯は、お客さんが他の時間帯よりも少ないので、煮込まれている確率が高いはず。
半田屋のプロになると、豚汁の香りだけで、その豚汁が浅い煮込まれか、深い煮込まれか、ピークまで熟成された煮込まれか分かります。
まあ、そこまで通い詰めなくても、大根の色合いを見れば大丈夫。
- 大根が透明に成りかけの白色だと、まだまだ煮込みが浅く、個人的にはイマイチです。
- 大根が豚汁の色合いに近づいていると、歯ごたえも柔らかく味が染みていて美味しいです。
- 大根が豚汁の色合いよりも濃く、箸で掴むと崩れてしまうまでに至ると、汁にこそ栄養があり、一滴たりとも残すことが許されなくなります。
具材は、半田屋の歴史とともに少しずつ変化があるようです。
今現在は「豚肉・大根・人参・豆腐・こんにゃく・ネギ・玉ねぎ」です。
昔は「玉ねぎ」は入っていなかった気がします。
また、季節には「里芋」が入っていることもあります。
さて、もうあなたも半田屋の豚汁が食べたくなったと思いますので、宮城を訪れた際には、牛タンだけでなく、半田屋の豚汁もぜひ食べていってください。
なお、インスパイア系として「豚汁うどん」というメニューも存在します。